俺はそっとドアノブを回した。なるべく音が出ないように、慎重に。ここはシティホテルの１２階で、時刻は深夜の３時を過ぎたところだ。
カチャリ
僅かに音が響き、ドアが開いた。室内に入ると、若い女性特有の過剰なまでのシャンプーの匂いが充満していた。耳を澄ませると、微かに寝息が聞こえる。部屋の主はまだ眠っているようだ。
俺はメインのベッドルームではなく、洗面所へと向かった。入って早々、目当ての品を見つけた。彼女の使用済みハブラシだ。それを口に含む仕草をしては、また離す。何度か繰り返したのち、えいやと口腔内へと運び、もきゅもきゅと咀嚼した。
次は彼女の脱ぎ捨てた衣類の確認だ。あった。ベッドサイドのイスに綺麗に畳んで置いてある。
スゥ～～～
俺は大げさに息を吸い込む。わかりやすく、視聴者に伝わりやすいように。そしてすぐさま恍惚の表情を浮かべる。ここが最大の見せ場だと言わんばかりに、目いっぱいのひょうきんな顔をつくる。田代や志村さんと何年間も頑張ってきた。きっと大丈夫、お茶の間は大爆笑間違いなしだ。
そして最後は寝相のチェック。この女性はアイドルだ。とはいえ、一線級のスターではない。本当のアイドルがこんな仕事を受けてくれるはずもなく、今回の相手もやはり二線級のグラビアアイドル。
一流にはなれなかった者―――。そういった意味では、俺と同類なのかもしれない。
くどいようだが彼女は一流ではないため、あられもない姿を撮影することが許されている。俺もカメラに合わせて、あえて下衆な目線で彼女の姿を嘗めまわす。時には足の裏をくすぐってみたり、匂いをかいでみたり。これも仕事なのだ。これが俺の生き様なのだ。
そして最後に「大成功」と書かれた看板を持ち、彼女を起こす。
そう、俺の名前は「桑マン」こと「桑野信義」。TVタレントにしてミュージシャン、皆の憧れのスター。
『黒い砂漠』
ゲームの話です。PCで遊ぶ、所謂MMORPGというやつですな。基本プレイ無料で、有利にゲームを進めたければお金を払ってくださいね、というスタイル。
この『黒い砂漠』というタイトルが非常に愉快痛快なのです。この一か月間、これで遊んでばかりです。
ゲームに興味のない方のために簡単に説明すると、『ドラクエ』ってありますでしょう？あれに登場するすべてのキャラクターを、ネットでつながった一人ひとりのプレイヤーが操作している感じ。そのネットでつながった一人ひとりのキャラクターが、各々で交流したり、生産活動を行ったりして、その世界の中で生活をしているイメージ。
で、こういった類のゲームは従来もたくさんあったのだけれど、この『黒い砂漠』が優れているのは「非戦闘系のコンテンツが充実している点」だと思うのです。要は、「戦わなくてもいい」のです。貿易商として大金を稼いだり、農場のおじさんとして作物を育てたり、漁師として生計を立てたり、何をしても良いのです。
そんなわけなので、農民ギルド（プレイヤー同士のサークルのようなもの）を作っておしゃべりしながらまったり農夫プレイを楽しんでいるような人もたくさんいる。もちろん、戦いたい人は各地の占拠戦で暴れたり、或いは他のプレイヤーを「辻斬り」してみたりで楽しんでいる。
で、それらが「基本無料」。PCを持っている人はとりあえず遊んでみましょう。
そんなわけなので、全国の暇人のみなさんはゼヒともプレイしましょう。そして、富豪の方はどんどんお金を落としてあげましょう。貧民である私は売り上げ面では貢献できませんのでね……。
おわり
MMORPG 黒い砂漠| Pmang公式メンバーサイト（ゲームオン運営）
↑こちらもしくよろでごんす。
