ぼくは幼少の頃からハットやキャップといった帽子類が好きだった。
幼稚園時代は園指定のよくあるハットをかぶり、ゴムひも部分を咥えてちゅぱちゅぱしながら通園するのが常だった。今にして思うと恐ろしく不衛生であるが、幼稚園児に衛生観念を求めるのは酷であろう。
小学校に上がるとL.L.Beanの通販で買ってもらったチノパンにネルシャツ、そしてカントリーな雰囲気のワークキャップがぼくのトレードマークとなった。ちなみにその頃からおしゃれっ子であったため、ランドセルなどというまったく気絶するほどにダサいものは2年生ぐらいで卒業し、グレゴリーのバックパックを愛用していた。
中高時代になると古着屋で購入した謎のベースボールキャップなどを学ランに合わせて着用し、自意識過剰な思春期ボーイらしくカッコつけながら登下校していた。足元はもちろんボロボロに加工し落書きしまくったコンバースのオールスターだ。
そして大学学部から院、就職してからはそれらのワークキャップなどに加えて冬場はニットキャップを嗜むようになっていた。
と、このようにぼくは帽子の類が好きなのであるが、時を経てフォーティおじとなった今、どのような帽子をかぶるべきなのかイマイチ路線を考え倦ねている。
そんななか街を闊歩していたある日、ショウウィンドウに映った己の姿を見て愕然としてしまった。
その日のぼくの出で立ちはというと、アイボリーのふわもこジャケットにサルエルシルエットのジーンズ、そしてトドメに誰かからもらったironyという女子ブランドのグレーニットキャップと、およそフォーティおじに許されるファッションではなかった。
フォーティおじがサルエルだと?ふわもこだと?女子ブランドのニットキャップだと?ふざけるのもいい加減にしろ!これではまるで歳を重ねることを認められず、必死に白髪を染めていつまでも若者のフリをしている中年お笑い芸人やイケメン俳優のようではないか。まったくもって痛々しいことこの上ない。
ウィンドウに映ったその姿に急激に恥ずかしくなったぼくは、予定をキャンセルしてそそくさとおうちに逃げ帰ったのであった。
「40代に突入した今、何を着て何をかぶるべきか」、実はこれは以前から考えていたことだ。いつまでも若者のような格好をしていてはいけない。いけないということはないが、「大人になっていくことを認められないでいるひと」みたいな感じで、なんとなくダサい気がするのよね。
そんなことを考えながら映画を観ていたところ、「まさにこれだろ」と思えるファッションを見つけた。

これ、ガイ・リッチーの『The Gentlemen』という映画の一場面なのだけれど、これに登場するマシュー・マコノヒーのコスチューム全般が非常にしゃれおつであり、大人ファッションに転向したいぼくにタリピツ即ちピッタリな感じなのであった。このノリこそが今のぼくが求めているものだ。

スーツもさることながら、このキャスケットがイカす。スーツではなくジャケパンにハンチングを合わせ場面もあったように記憶しているのだけれど、それもまたイカしていた。ともあれ、これこそがぼくが目指すべき到達点なのだ。
きみ「でもあんたマシュー・マコノヒーじゃないじゃん。そんな格好してもその写真の通りにはならないじゃん」
確かにね。でも彼のことを色々と調べているなかで身長を検索すると182cmと出た。

この数値はぼくの身長とまったく同じだ。ということは、これはもう「ぼくとマシュー・マコノヒーは似ている」「ほぼマシュー・マコノヒーである」と言ってしまって良いのではないか。そういうことだから、きみからの心無い言葉など意に介さずマコノヒっていこうと思う。
マコノヒっていこうと決めたのは良いものの、ツイードのキャスケットやハンチングはどこで入手すればよいのか。
ZOZOTOWNにあるようなものは総じてペラペラで安っぽい。あれらは物の良し悪しのわからない若者向けだ。
ユナイテッドアローズやジャーナルスタンダードあたりにはあるだろうか?いや、これらも本格なジャケットを仕立てたりするには心許ないし、そもそもツイードのハンチングなど見かけた記憶がない。
そうだ!横浜のバーニーズになら真っ当な品質のものがあるかもしれない!
バーニーズとはバーニーズニューヨークのことであり、ぼくが高校生ぐらいの頃から足繁く通ったり通わなかったりしていたおしゃれ衣料品店の名称だ。
早速、今週末にでも愛車をすっ飛ばして見てこよう。この続きは進展があり次第、ここに綴ろうと思う。
それにしてもマシュー・マコノヒー、復活できて良かったね。昔はラブコメ優男みたいなイメージでおよそ演技派とは程遠い感じだった。
そういったトレンディー俳優(古すぎる表現)みたいな人らが中年に差し掛かって演じられる役柄が無くなっていく、みたいな現象は洋の東西を問わないようで、案の定彼の姿もあまり見かけなくなってしまっていたね。
そこで「若者」「イケメン」的なキャラクターから「演技派」への脱却が求められるのだろうけれど、彼はなんとかそれに成功した感じか。『Interstellar』での父親役も良かったし、無事に「大人の役者」としての地位を確立したと言っても良いのかな。
しかしまさか当のマコノヒー氏も、こんな極東の島国の謎ブログで話題にされているとは夢にも思っていないだろうね。
おわり